(池田晶子記念)わたくし、つまり Nobody賞

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わたくし、つまりNobody賞

2023年 第16回

町田樹 町田樹 町田樹 町田樹

【略歴】

【授賞理由】

【受賞記念講演】

受賞記念講演会「アスリートとして経験し、研究者として叩き上げる」

【ブックリスト】

若きアスリートへの手紙──〈競技する身体〉の哲学
若きアスリートへの手紙──〈競技する身体〉の哲学

「サブタイトルの『〈競技する身体〉の哲学』に注目してほしい。昔から今に至るまで、アスリートというのは寡黙な存在だ。決して多くを語ろうとはしない。だがその裏には、はてしなく深く広大な『経験と叡智の海』が広がっている。私は、その海を学術という名のコンパスを片手に航海してみたかった。そして、アスリートによるアスリートのための新しい哲学を立ち上げたいと志し、この手紙を書き始めた。本書のサブタイトルには、そうした私の挑戦的な意図が込められている」(本書の「追伸(おわりに)」より)
全21信の手紙形式のエッセイからなる本書は、第Ⅰ部で、スランプ脱出法やライバルの存在意義、引退やセカンドキャリアの築き方など、次世代を担うすべてのアスリートに伝えたい実践的なメッセージが親身な言葉で語られ、次いで第Ⅱ部では、もう少し普遍的で概念的な問題として、美的探究の心得にはじまり、フィギュアスケートやダンススポーツなどのアーティスティックスポーツが著作物であることが論じられ、たとえば音楽使用のように、如何に競技が他者の著作物利用のうえに成り立っているか、その認識の必要性が説かれてゆく。そして、さいごの第21信で語られる、スポーツを巡る「感動を与える」という言葉への違和感や、スポーツには「力」があると思い込むことの傲慢さへの指摘は、まさに著者の批評活動の真骨頂と言えるだろう。
このように本書は、若きアスリートに向けた手紙のスタイルをとった実用書であるとともに、人間の身体運動や表現と、その精神を考察する哲学書となっている。

山と渓谷社◆定価3,600円(本体価格)
2022年4月刊

アーティスティックスポーツ研究序説 フィギュアスケートを基軸とした創造と享受の文化論
アーティスティックスポーツ研究序説
フィギュアスケートを基軸とした創造と享受の文化論

スポーツは芸術でもあり得るのか?
フィギュアスケート、新体操、アーティスティックスイミング、ダンススポーツなど、スポーツとアートの重複領域についての斬新かつ学際的な論考であり、町田氏の早稲田大学大学院時代の博士論文がベースとなった一冊。
「アーティスティックスポーツ」(AS)という概念を提唱し、身体運動とその表現を、経営・経済学、法学、社会学、芸術学などの分野を横断しながら探究し、スポーツの世界に新たな沃野を拓いた画期的な著作。本書は全六部構成となっており、その中でアーティスティックスポーツをめぐる「美学論(第Ⅰ部)」、「著作権論(第Ⅱ部)」、「作品批評論(第Ⅲ部)」、「市場経済論(第Ⅳ部)」、「産業論(第Ⅴ部)」、「アーカイブ論(第Ⅵ部)」が次々に展開される。アーティスティックスポーツが著作物たり得る条件を満たしていると論証した第Ⅱ部が白眉だが、さらにこれからの時代に、社会にとってアーティスティックスポーツの文化は如何にあるべきかを広い視点から論じ、スポーツとアートが汽水域のように交じり合う領域における身体運動文化の創造と享受のあり方について、学際的観点から縦横に考察していく。
著者の研究者としての活動が反映された一冊だが、競技者はもとより、財としてのプログラムの存在や公的アーカイブの必要性、競技を鑑賞する観客の立場など、今後のアーティスティックスポーツに関わるすべての人々にとって必読の書。

白水社◆定価5,000円(本体価格)
2020年6月刊

そこに音楽がある限り─フィギュアスケーター・町田樹の軌跡─
そこに音楽がある限り─フィギュアスケーター・町田樹の軌跡─

「フィギュアスケーター町田樹」という人間存在の成立と未来が詰まった本。
町田樹は、どのようにしてトップアスリートに、そして競技者のみならず振付・演出家として、真のアーティストに変貌していったのか。「フィギュアスケートは総合芸術である」という信条のもとに彼の活動を支え、プロデュースしてきた匿名の制作家集団 Atelier t.e.r.m(町田自身もその一員)が、ついに知られざる過程のすべてを語る。
フィギュアスケート写真の醍醐味をはじめ、楽曲の選択と解釈、あの素晴らしいプログラムの数々、舞台照明や衣裳制作の秘密に至るまでが、写真や記事で克明かつ客観的に記録され、アーカイブとして表現されているだけでなく、この贅沢な造りの書物じたいが、一つの総合芸術作品となっている。
読者にとって、紙の書物というものが言葉と感動を所有する舞台になるのだ、と強く実感させる一冊。
著者の創作活動を巡る「表現」の世界が、ここにいかんなく展開されている。
また、収録された町田論文「アーカイブが拓くフィギュアスケートの未来」は、著作物としてのフィギュアスケートの今後を考えるうえで示唆に富む。

Atelier t.e.r.m編
新書館◆定価12,000円(本体価格)
2019年10月刊

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