2007年 春にこの世を去った文筆家・池田晶子は、生前、ひとつの賞の構想を温めていました。この法人は、その著者の意思を具現化し、「(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞」を主催、運営するため、以下に述べる理念のもとに賞の創設関係者が中心となって設立したものです。
団体の名称は、著者の一作品名を冠して「わたくし、つまりNobody」といたしました。2008年2月1日には特定非営利活動法人(NPO法人)の認証を受け、現在に至っています。
この法人は、顕彰という行為における不偏の立場を自らに課すために、原則として非営利かつ自主独立の在り方を旨としています。そのために、その活動は当初より寄付と会費によって存続して参りました。現在は、特定非営利活動法人として個人会員および団体会員の賛助に支えられ、広く篤志と協賛、寄付によって運営されています。
NPO法人 わたくし、つまりNobodyは、その趣旨と活動内容に賛同する多くの個人および団体サポーターを広く求めています。ご賛同をいただけます折は、どなたでも賛助会員のご登録を承ります。ご寄付のみのご芳情もお待ちします。
是非、以下に申し述べます当法人の目的、理念、概要をご覧いただきましてご理解を賜わりますようお願い申し上げる次第でございます。
この活動と賞の未来に、末長く皆様のご賛同とご支援を仰げれば幸甚です。
ご入会、ご寄付については、「入会とご寄付」のページをご覧ください。
このNPO法人の活動は、池田晶子の文芸的、思索的業績を記念するとともに、その業績にみられるように、人間精神の本質である「考えること」を深く率直に追求し、現代日本語の表現の可能性を開拓しようと試みる、そのような人物と作品を顕彰することを目的に置いています。
当法人と活動の理念について、詳しくは以下の趣旨書にお目通しください。
私たちは、以下の趣旨のもとに「特定非営利活動法人 わたくし、つまりNobody」を設立し、広く一般市民に対し、池田晶子の文芸的、思索的業績を記念するとともに、人間精神の本質たる「考えること」を実践する人々の顕彰を通して、社会と学術、文化、芸術の振興に寄与することに努めます。
古代ギリシャの哲学者ヘラクレイトスは「自分自身を探求して、凡てのことを自分自身から学んだ」と言ったと伝わります。
現代日本においても、自分とは何か、何が自分なのか、存在するとはどういうことか、と問い続け、その生涯を通じて存在の謎を追い求め表現しようとした文筆家、池田晶子がいました。彼女は、次のような言葉を私たちに残しています。「私を考え、私を突き抜け、普遍に至る、これが形而上学。もはや「私」はNobody、そして、Everywhere」「考えているその瞬間の精神は誰でもなく、無私である」、「さて死んだのは誰なのか」。
このように問い、考え続けてゆくのは、じつは一部の人だけの特殊な在り方ではなく、言語を所有したわれわれ人類に共通の、切実で普遍的な感受性のはずでした。私たちの精神がいつも魅了されて止むことのない、ほとんど生理的とも言える、存在の不思議さへの問いと論理(ロゴス)への渇望です。そのように根源的な思索が誰にでもあり得ることを示し、そうした思索の軌跡を、ごくふつうの日常の言葉を用いて正確かつ美しい文体で表現したところに、池田晶子が果たした文芸の魅力がありました。彼女の業績のひとつに、現代日本語における「哲学エッセイ」の形式を確立したと評されるのもこの点で、彼女の残した言葉は、私たちが生活の中でとかく忘れてしまいがちな「考える」という営み、そこで発見される、途方もない普遍性への驚き、悦び、怖しさ、といった精神の感受性のようなものを言い当て、思い出させてくれるものです。
したがって、彼女が残した作品と言葉の数々は、ひとり池田晶子という個人の足跡に留めるべき性質のものとは思われません。固有性の消失は、それを読む個々人に対しても主観の排除を求めています。言葉がいわばNobodyな存在として味わわれたとき「池田某」の仕事は、はじめて万人に共有される本当の価値と生命を得ると考えます。
池田晶子の一作品名を冠するこの法人の活動は、以上の思いを共にする者が参集し、広く一般に対してその文芸的、思索的業績を記念し伝えることを目的とするものです。同時代人としてその著作活動に出会えた喜びを共にするとともに、その普遍的な意義を、後世の人々に受け渡してゆくことを当法人の使命に措きたいと存じます。
ところで、その文体が極めて斬新、独自なものであったがゆえに普遍を語り得たともいえる文筆家、池田晶子の存在とは、しかし、突然に孤立してア・プリオリに出現した特異な現象ではありませんでした。過去、多くの偉大な才能がそのようであった如く、彼女の場合も必ず先人の思索と才能を貪欲に辿り、消化し自らの血肉とする工夫と精進を常に重ねていたことを知ります。それは、自身の感性と才能のみを恃み、言葉の力を信じて行なわれる先行者達との精神のリレーでありました。ときには彼女を支える有形無形の力と運にも恵まれて、そうした努力と僥倖の一切が、池田某という形に凝縮して現われた、その果実が、私たちが目にするあの言葉の数々だと思われます。
事情は、彼女の仕事を踏み越えてゆく次代の才能においても、同様でありましょう。この法人は、そのように努力する人に価値を措くものです。ひたすら真摯に考え続け、それを美しい言葉で表わし、あらたな表現形式を獲得しようとする精神の営みに至上の価値を認め、そのような表現者をいちはやく見出し、些かの応援をしたいと考えます。この趣旨のもとに多くの賛同と寄付を募り、「わたくし、つまりNobody賞」を創設し、そのような人物を広く一般に尋ね、定期的に顕彰し、副賞の賞金を贈って以後の精進を激励することを、当法人の活動の目的といたします。
この顕彰は、とくに人物とその作品の在り方に対して行ないます。作者や作品の商品性を高らしめることを目的とした賞ではありません。その意味で出版社などが主催する多くの「新人賞」や「作品賞」と一線を画する取り組みが求められます。この活動は、以上の趣旨の如く、ひたすら考え続け、それを表現し得る精神の営みをこそ対象とするものであり、その一点に照らして表現者の姿勢と可能性を顕彰し応援してゆこうとするものです。そうした言葉や営みこそが人々の心に届き、私たちの精神を益するとともに、次の時代を築いてゆく大きな力となることを確信するからです。
以上の活動を行なうに際し、目的とその公益性に鑑みて、いま、特定非営利活動法人 わたくし、つまりNobody をここに設立し、学術、文化、芸術振興の一助たり得ることを期する次第であります。
当法人の趣旨に賛同される有志の参集と、協力を募ります。
2007年10月8日(団体設立時の趣旨書より)
上掲の目的と理念を実現するために、当法人は次の事業活動を行ないます。
(1)(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞 の主催、運営
(2)講演会の開催、Webサイトによる広報事業、会員向け会報の発行等
(3)池田晶子の著作物についての校訂、原稿・資料等の整理、分類事業
(4)著作物の発行、利用に関する事業
(5)その他、上掲の目的を達成するために必要な事業
組織:特定非営利活動法人 わたくし、つまりNobody
理事長 伊藤 實
住所:東京都中央区日本橋本石町3丁目3番16号日本橋室町ビル7F(事務局を設置)
TEL:03-3270-1517 FAX:03-3270-1472
https://www.nobody.or.jp/
事業年度:毎年1月1日に開始、12月31日に終了
当法人へのご意見、ご質問等は、「お問い合わせ」ページからお願いいたします。