1980年、東京都生まれ。 専門は障害者文化論、日本近現代文学。 東京大学大学院人文社会系研究科修了。 博士(文学)。 二松学舎大学文学部准教授。 障害や病気とともに生きる人たちの自己表現活動をテーマに研究・執筆を続ける。 著書に『隔離の文学──ハンセン病療養所の自己表現史』(書肆アルス)、『生きていく絵──アートが人を〈癒す〉とき』(亜紀書房)、『差別されてる自覚はあるか──横田弘と青い芝の会「行動綱領」』(現代書館)、『障害者差別を問いなおす』(筑摩書房)、『車椅子の横に立つ人──障害から見つめる「生きにくさ」』(青土社)、『まとまらない言葉を生きる』(柏書房)などがある。
冷笑、中傷、揶揄、論破。 あるいは、同調、追従、忖度、強弁。 いずれも、人を追い詰め、黙らせる言葉ばかりです。 そうしたいやな言葉が溢れる今日の分断社会にあって、沈黙を強いられた言葉、なかったことにされた出来事に目を向け、丁寧にすくい取ろうとするのが荒井氏の仕事です。 それは声を上げること、言葉にすること、表現することの本来の意味をあらためて問いなおすことにほかなりません。 人はなぜ言葉を使い、声を上げ、表現しようとするのか。 やむにやまれず出る言葉は、華々しくもなければ力強くもないかもしれない。 しかしそのたどたどしく言いよどむことの価値を、こうとしか言えないという切実さを捉えようとする氏の姿勢は、表現という行為のもつ力を確実に思い出させてくれます。 今後もその誠実さで、言葉と表現への信頼を取り戻し、あらたな可能性を広げていかれることを期待し、当賞を贈ります。
いま、わかりやすい言葉ばかりが求められるけれど、本当は要約できないもの、まとめきれない言葉のほうが大切なのではないか──。マイノリティの自己表現をテーマに研究してきた著者が出会った「魅力ある」言葉をとおして、言葉への信頼を取り戻すエッセイ集。
柏書房◆定価1,800円(本体価格)
2021年5月刊
車椅子の横に立つ人を、介助者だと思ってしまう。こうした紋切り型の想像力や言葉からこぼれ落ちてしまうものをこそ、私たちは見出さなければならない──。言葉にならないものの存在感、それを表出しようとした人々をとおして社会のあり方を問いなおす。
青土社◆定価1,800円(本体価格)
2020年7月刊
「差別はいけない」と誰もが言う。でもなぜ「いけない」のだろう。差別されてきた人たちの歴史をたどり、かれらの声を拾い上げることで「いけない」という言葉の意味と内実を考える。「いけない」の思考停止から一歩先へ進むための書。
ちくま新書◆定価840円(本体価格)
2020年4月刊
社会の理不尽な不寛容さに声が上がり始めているいま、障害者たちが懸命に声を上げてきた歴史をあらためて考える。川口有美子さん、原一男さん、中島岳志さんら6名との対談集。
現代書館◆定価1,700円(本体価格)
2019年8月刊
1970年代から80年代の障害者運動を牽引し、青い芝の会「行動綱領」において健常者文明にきびしい批判を展開した横田弘。彼の思想と今日的な意義をたどり直す。
現代書館◆定価2,200円(本体価格)
2017年1月刊
東京・八王子市の丘に立つ精神科病院、平川病院にひらかれた〈造形教室〉。そこで心の病を抱えた人たちが行う造形活動は、「アートセラピー」のような治療が目的ではなく、自己表現によって自らを癒やし支えることを目指している。〈造形教室〉の取り組みから表現と人間の関係について考える。
亜紀書房◆定価2,200円(本体価格)
2013年9月刊
ちくま文庫
筑摩書房◆定価900円(本体価格)
2023年1月刊
ハンセン病者への隔離政策が確立する1930年代から、戦争を経て、民主主義を謳歌する50年代までの激動の時代に、病者自身が描いた文学作品を考察する。終生隔離という極限状況に置かれた者が、いかにして「抑圧された生命を生きる意味」を紡ぎだすのか。
書肆アルス◆定価2,500円(本体価格)
2011年11月刊
障害者運動は自らの内面をどう表現してきたか。障害者文芸同人誌『しののめ』を主宰した花田春兆、健常者文明に対する鮮烈な批判を展開した「青い芝の会」の行動綱領を起草した横田弘を中心に、日本の脳性麻痺障害者運動における「綴る文化」を解明する。
現代書館◆定価2,200円(本体価格)
2011年2月刊