わたくし、つまりNobody賞

2017年 第10回

栗原康 栗原康 栗原康

【略歴】

1979年、埼玉県生まれ。大学院修了後、ニート、ときどきフリーター。現在は、週にいちど東北芸術工科大学ではたらいている。専門は、アナキズム。著書に『G8サミット体制とはなにか』(以文社)、『大杉栄伝』(夜光社)、『学生に賃金を』(新評論)、『はたらかないで、たらふく食べたい』(タバブックス)、『現代暴力論』(角川新書)、『村に火をつけ、白痴になれ』(岩波書店)、『死してなお踊れ』(河出書房新社)。ビール、詩吟、河内音頭、長渕剛が好き。

【授賞理由】

すでにこの世にない人物にも、はるか遠くにいる人にも、われわれは言葉によって出会うことができる。いやむしろ、言葉としか出会うことができない。出会った言葉といかに向き合うかはその人の覚悟の度合いによるが、栗原康氏は誰よりも強く激しく言葉を抱き止め、その言葉の存在を新たな語り口に仕立て上げるという荒業を成し遂げた。大杉栄伝、伊藤野枝伝に見られる縦横無尽の語りは、対象となった「個人」の実在を超え、彼我の境を越え出て、誰のものでもない言葉の存在、思想の存在をまざまざと見せつけるとともに、氏でなくしてはなしえない力強い表現へと昇華させている。自己と他者のあわいにある言葉の際を自由に駆け巡り、氏はどこへ向かおうとするのか。なおいっそう遠くへと突き抜けられんことを期待し、当賞を贈ります。

【ブックリスト】

死してなお踊れ──一遍上人伝
死してなお踊れ──一遍上人伝

壊してさわいで燃やしてあばれろ! 踊り念仏の一遍がダメな者たちをこそ救うためにアナーキーに甦る。注目の著者による渾身の力篇。

河出書房新社◆定価1,600円(本体価格)
2017年1月刊

増補G8サミット体制とはなにか
増補 G8サミット体制とはなにか

本書は「サミットとはなにか」を解説する入門書です。その母体であるIMF(国際通貨基金:第2次世界大戦直後の1944年に設立された国際通貨制度)の体制を引き継いで形成されたいわば世界秩序を具体的に説明して、その体制が世界の貧困、差別、戦争などの多様な社会問題を引き起こしている現状を分かり易く説明します。したがって、本書はサミット体制の入門書であるばかりでなく、サミット体制のもとで蔓延してきたグローバルな社会問題の入門書です。

以文社◆定価2,200円(本体価格)
2016年4月刊

村に火をつけ、白痴になれ──伊藤野枝伝
村に火をつけ、白痴になれ──伊藤野枝伝

「あなたは一国の為政者でも、私よりは弱い」筆一本を武器に、結婚制度や社会道徳と対決した伊藤野枝。彼女が生涯をかけて燃やそうとしたものは何なのか。気鋭の政治学者が、ほとばしる情熱、疾走する文体で人間・野枝に肉迫し、一体となり、その思想を、その言葉を現代社会に甦らせる圧倒的評伝。

岩波書店◆定価1,800円(本体価格)
2016年3月刊

現代暴力論──「あばれる力」を取り戻す
現代暴力論──「あばれる力」を取り戻す

いま、わたしたちは、徹底的に生きのびさせられている。生きのびさせられるために、暴力をふるわれつづけてきた。そろそろ、この支配のための暴力を拒否したっていいはずだ。あえて現代社会で暴力を肯定し直し、“隷従の空気”を打ち破る!! 最注目のアナキズム研究者が提起する、まったく新しい暴力論。「わたしたちは、いつだって暴動を生きている」

角川書店◆定価800円(本体価格)
2015年8月刊

はたらかないで、たらふく食べたい──「生の負債」からの解放宣言
はたらかないで、たらふく食べたい──「生の負債」からの解放宣言

現実社会の秩序を疑え。「生の負債化」に甘んじるな。大杉栄、伊藤野枝、幸徳秋水、はたまた徳川吉宗、一遍上人、イソップ物語、タランティーノ……あまたの思想、歴史、芸術から今を生き抜くあたらしい論理を構築。アナキズム研究のかたわら合コンも恋愛もあきらめない、非労働系男子のたたかいの日々に、笑いながら溜飲が下がる爆笑痛快現代社会論。

タバブックス◆定価1,700円(本体価格)
2015年4月刊

学生に賃金を
学生に賃金を

ありえないほどの高学費。奨学金という名の借金。バイト・就活漬けの日々。…学生生活はなぜここまで破壊されてしまったのか!?想像してみよう、無償の大学を。万人の自由な生が花開く時空を。

新評論◆定価2,000円(本体価格)
2015年2月刊

<書店リンク>
紀伊國屋書店ウェブストアhonto本の通販ストア

大杉栄伝──永遠のアナキズム
大杉栄伝──永遠のアナキズム

暗い時代に乱れ咲く生の軌跡。米騒動、ストライキ、民衆芸術論……。破天荒な生き方というだけでは語りつくせない、その思想に光をあてた、新たな評伝の登場。紀伊國屋じんぶん大賞2015第6位。

夜光社◆定価2,000円(本体価格)
2013年12月刊

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