1982年生まれ。ライター。東京都出身。大学卒業後、出版社で主に時事問題・ノンフィクション本の編集に携わり、2014年秋よりフリーとなる。多くの雑誌、ウェブ媒体に寄稿。インタビュー・書籍構成も手掛ける。著書に『紋切型社会──言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社、2015年、第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞)などがある。
(写真撮影・宇佐巴史)
耳あたりの良いキャッチフレーズは、時に人を否応なく排除し、時に人を暴力的に黙らせる。氏が『紋切型社会』で問うたのは、こん日の社会を覆う、この言葉の負の力です。この力にいかにして抗うことができるのか。ただ安易に切り返し、言い返すだけでは、自らもまた紋切型に堕ちてしまいかねません。その点を強く意識し、排除され隠蔽されたものを一つ一つ丁寧に取り出す氏の手つきには、言葉の本来の力への限りない信頼が感じられます。言葉を疑い、言葉を信じる。言葉の暴力に、不断に言葉で抗いつづける。氏の活動の根幹にあるこの姿勢にこそ、新しい表現は拓けるものと信じ、当賞を贈り、さらなる闘いへと進まれんことを願います。
「育ててくれてありがとう」「全米が泣いた」「国益を損なうことになる」「会うといい人だよ」「ニッポンには夢の力が必要だ」「うちの会社としては」──おきまりのフレーズなのだが耳にするたびにもやもやしたものを感じずにはいられないのはなぜだ? 紋切型ことばの奥で硬直している現代社会の症状を軽やかに解きほぐす。
朝日出版社◆定価1,700円(本体価格)
2015年4月刊