わたくし、つまりNobody賞

2021年 第14回

上間陽子 上間陽子 上間陽子 ©Ryouko Shinzato

【略歴】

1972年、沖縄県生まれ。 琉球大学教育学研究科教授。 普天間基地の近くに住む。 1990年代から2014年にかけて東京で、以降は沖縄で、未成年の少女たちの支援・調査に携わる。 2016年夏、うるま市の元海兵隊員・軍属による殺人事件をきっかけに沖縄の性暴力について書くことを決め、翌年『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』(太田出版、2017年)を刊行。 現在は沖縄で、若年出産をした女性の調査を続けている。 2冊目の単著となる『海をあげる』(筑摩書房、2020年)では、沖縄での生活が政治によっていかに壊されているかを書いた。

【授賞理由】

上間陽子氏は、ひとの言葉を聞くことをとても大切にしています。 暴力や貧困の中の若い女性たち、軍機の爆音の下で沈黙する人々の、聞かれることのない声にひたすら耳を傾ける。 それを言葉にすることによって、こぼれ落ちるものを、記そうとしています。 「自分の声が聞こえないともがく日々」の中で、上間氏が書き始めた文章は、他者というはかりしれない存在をどう理解したらよいのかという、答えのない問いについて、私たちを切実な思索の世界に誘います。 新しい言葉を紡ぎ出そうとする「聞く人」上間陽子氏に、当賞を贈ります。

【ブックリスト】

裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち
裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち

沖縄で、10代から夜の街で働く女性たちの生活史を聞きとりまとめた。 沖縄における暴力の問題が、どのようなかたちで若年層・生活困難層に現れているかを詳細に記録し、沖縄の語られ方を大きく変えた一冊。

太田出版 ◆ 定価1,700円(本体価格)
2017年2月刊

海をあげる
海をあげる

「海が赤くにごった日から、私は言葉を失った」
日に日に悪くなっていく沖縄の政治状況に対して書かれた、痛切な日々の記録。
内容とともに、その文章の美しさが大きな反響を呼んだ、初めてのエッセイ集。

筑摩書房 ◆ 定価1,600円(本体価格)
2020年10月刊

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