1979年、東京都生まれ。作家。92年までニューヨーク在住、早稲田大学第一文学部卒。在学中はワセダミステリクラブに所属。 2010年、デビュー作となった囲碁を題材とする「盤上の夜」を第1回創元SF短編賞に投じ、受賞は逸すも選考委員特別賞である山田正紀賞を得る。同作を表題とする『盤上の夜』が、第一作品集ながら第147回直木賞候補・第33回日本SF大賞となった。 2013年3月、第6回「(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞」を受賞。 2017年には、第38回吉川英治文学新人賞と第30回三島由紀夫賞を受賞している。
囲碁やチェッカー、麻雀、チャトランガ(将棋やチェスの原型)、将棋など、盤上遊戯における極限状況を言語作品に創出することで作者は何を企んだのか。そこにあるのはゲームのルールのみ、対戦者はその言語ゲームの中に命懸けの対話を試みているかのようだ。勝負を語らずに勝負の本質を、心理を描写せずに心理の本質を、自分が今ここに在ることの不思議と畏怖を、盤の奥底にひそむ闇から、物語の主人公とともに、飛び交う刃物のような言葉で読者に問いかけてくる。氏が、よほど純粋に言葉の力を信じているからこそ可能となった思索的冒険の成果であり、新しい表現者を迎えた喜びを籠めて、当賞を贈ります。
囲碁、チェッカー、麻雀、将棋、古代チェス……対局の果てに、人知を超えた何ものかが現れる。
一人のジャーナリストが語る、盤上遊戯、卓上遊戯をめぐる奇蹟。そこには何が賭けられているのか——。
東京創元社
2012年3月刊